1973年5月7日(月) 一文で期末試験開始。学部団交は革マルの妨害により中止。商学部が自治会費を学生会(革マル派)に支払った経緯を釈明。

提供: 19721108
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【概要】

一文で、前年度の期末試験が始まった。全面的なレポート化など、試験をめぐっては当局との折衝が重ねられてきたが、押し切られる形となり、討論を重ねて結束を図ってきたクラスの足並みに乱れが生じることとなった。この日予定されていた学部団交は、革マルの妨害とロックアウトによって学内に入ることが出来ずに中止。商学部で、学生会(革マル派)に対し48年度4月・5月分の自治会費を支払ったことが判明。


【この日のできごと】

◎一文試験始まる。新執は「レポートに切替えなければ応じられない」と態度表明し13:00より181教室で一文学部団交の予定も、革マルの妨害で開けず。8号館301教室で一文集会も試験強行に対して方針提起できず。
◎商学部当局は、学生会(=革マル)よりの請求に基づき、47年度学生会費の預かり残額と48年度会費4・5月分を月割りで支払ったことを認めた。


【試験攻勢】

一文当局は、4月25日の発表に従って試験を実施した。
実施に至る経緯について一文団交実行委員会はビラの中で次のように述べている。
「教授会は3月下旬の試験発表をスケジュール発表にとどめ、なしくずし的に授業を開始し、闘争圧殺=正常化策動路線をしいてきている。一見我々の運動に好意を示すかのような『181教室使用許可』も、実は4.4革マルのテロに対する学生の決起が自らにも波及することを怖れた予防策にすぎないだろう。そしていよいよ当局は、学事日程上形式的にでも試験を行わんとし、連休に先がけて試験時間割を発表したのである。(中略)教授会は4月25日を休講(註:国鉄ストのため)にしながら、一方で試験「発表」を強行してきた。このことの中に我々は、試験にかける当局の並々ならぬ決意と、その犯罪性を見抜くことができるだろう。今、我々の団結=共同性の質が問われている。試験阻止!仮進級を本進級へ!教授会の自己批判を克ち取れ!」
これまで討論を重ね、意志一致を図り、ともにスクラムを組んできたクラスの中でも、試験に対する意見は大きく分かれた。『一文有志の記録』には2年生へ進級したクラスの反応が次のように記載されている。
「試験前にクラス討論を確保出来たということは、否定的な状況とはいえ、一定の成果であると考える。さらには、それを通して今まで必ずしも充分に意志の疎通が出来なかった級友と、連帯をかちとるような形で組織化が進んだということもまた事実である。さらには、あのまま試験を多数決でボイコット出来たとした場合、そこでのクラスの崩壊という危険性が充分あり、我々の本来の意思を曲げることになったとはいえ、結果的にはあのような実施しかなかったと思うし、クラス活動を今後進めていく上で一定の足がかりになり得たと考える。しかし、ここで何故にクラスの団結がそのような地点にまで後退してしまったのか、それでは今後、どのような形でクラス活動を進めていったら良いのか。」
この日予定されていた学部団交レジュメにも主要獲得目標の一番目に「5.8~5.12後期期末試験中止→全面的にレポート化させる」が上げられている。その根拠となったのは、4.21学生大会において全面レポート化と試験阻止(レポート化あるいはストライキ)の両案の賛成票が過半数を超えたことである。
当局に対しては、「6項目要求をはじめとする我々の正統な要求に対し、何ら誠実な回答を用意しないまま『タイムリミット』だからやむを得ないという理由で試験を強行することは認められない。試験強行は、5月初旬という新入生を迎えた我々の運動にとって最も重要な現局面に一週間の空白期間をつくるばかりでなく、試験によって我々が『個』に分断され(一緒に闘ってきた学友が試験をバラバラに受け、単位認定=評価も別々になされる)、結果的に我々の運動への分断・鎮静化策動となり認められない。」とその不誠実を指摘し、対抗する姿勢を示した。
試験を中止し一律評価あるいは全面レポート化を目指すことによって、「在学生である以上誰もが避けて通れない試験問題を通して(編註:話し合うことによって)クラスの再団結を克ち取ってゆくことになる」と、その意義を強調した。また、新3年専修連絡協議会(準)からの要求である「仮進級を本進級へ」については「仮進級のまま1ヵ月以上経過し、すでに個々で教科書も整え、新専修でのクラス活動も開始しているこの時期に、運動を担ってきた学友(彼等は出席率等も総じてよくない)とそうでない学友とに分断させることは認められない」とした。


【革マル派の妨害で学部団交が中止】

この日は、2日に次ぐ学部団交が予定されていたが、またもや革マル派の妨害によって中止のやむなきに至った。
「5月7日、文学部キャンパスにおいて革マル派学生と行動委員会系学生との間で衝突があり、救急車で運ばれた2人をふくむ数人のけが人が出ている。
行動委員会系学生は12時頃から本部前において集会を開き、12時半頃文学部キャンパスのスロープ下に集会の場所を移しデモに移ったところ、10時半頃よりスロープ上でビラ配りをしていた革マル派学生がデモの隊列に乱入し、行動委員会系学生は文学部キャンパスから追われ、文学部正門と向かいあった穴八幡下の道路に引き下がった。しばらく正門をはさみにらみあいを続けた後、行動委員会系学生は再度文学部キャンパスに突入を計った。これに対し革マル派は角材でもって武装したため、行動委員会系学生もまた角材でもってこれに対応し乱闘となったが、後方から鉄パイプで武装した革マル派学生が加わったため、行動委員会系学生はちりぢりになってしまった。この乱闘の中で文学部当局は、文学部構内ロックアウトの措置をとり、この日の一文、二文の午後からの授業は中止となった。」(早稲田キャンパス第177号より。表記一部修正)
「自治会再建をめぐり学内の対立が続いている早大で、7日午後、学部との団交に向かおうとした一文自治会臨時執行部派の学生80人と、団交を阻止しようとする革マル派学生30人が角材で乱闘、双方に4人の重軽傷者を出した。早大では新学期以来、革マル派と反革マル派のこぜりあいが絶えなかったが、連休明けとともに各学部臨時執行部の承認を学部当局に求める動きと、これをはばもうとする動きが活発化しており、川口君リンチ殺人事件から半年たったいまでも暴力の根は以前深い。」(1973年5月8日付朝日新聞)
この記事にはまた、記者会見での押村襄学生担当理事によるコメントも併記されている。「旧自治会執行部をリコールした執行部は規約もなく、自治委員の選挙もしていないので新執行部とは認めていない。しかし一文の執行部は現在ある交渉団体としては唯一のものなので、新執行部と呼びたい。」


【商学部の自治会費】

商学部は、5月7日付の告示で学生会費(自治会費)の処理について次のように説明した。というのも、当局によって自治会費の前年度分の残額と4月、5月分が革マル派の旧自治会(編註:学生大会においてすでにリコールされている)に支払われた事実が明らかになり、高まる糾弾の声の前に、説明を余儀なくされたからである。
「学生費の取扱いは『商学部学生会規定』(とくにその第27条および第29条)に則って、学生会(いわゆる学生自治会)との話し合いに基づく慣行に従って行なわれてきた。このことは学生会の創設以来変ることなく守られてきた。
昭和47年度に関しても、この方針に変更はなく、従来通りの慣行に従って処理されてきたのであるが、昨年11月に至って、文学部構内において一大不祥事が発生したのに伴い、その支払いを一時停止したのである。
この処置は昨年11月15日付商学部教授会・教員会の学生諸君に対する意思表明の文書において『もし商学部の学生がこの事件に関与していることが明白になった場合は、それ相応の処置をとる決意である』との方針に基づいて行なったものである。
以来約半年経過したが、現在の時点では、商学部の学生が事件に関与したという事実は明らかにされていない。そこで学生会よりの請求に基づき、学部は教授会の諒承を得て、47年度学生会費の預り残額を支払った。また48年度会費については、慣行にしたがって4・5月分を月割で支払った。
学生に支払われた会費(中略)の支出内容について、学部は原則として介入するつもりはない。それは学生自治の範囲内のことであり、学生の責任に属することであると考える」と述べた後、「われわれはそれが正しい学生自治の発展のために有効に使用されることを心から希望している」と結ばれている。
自治会再建運動は商学部にも及び、12月1日の学生大会で革マル派自治会は正式にリコールされており、当局が言うところの「学生会よりの請求」の学生会そのものは存在しなかったのである。ただし、革マルが本部での活動拠点としていたこともあり、商学部には革マルシンパも多く、それは教職員にも及ぶほどの勢力であった。
こうした商学部当局の自治会費の処理が、自治会再建途上においてどのように映ったか…。一文執行委の5.7学部団交レジュメには「商学部当局の革マル『常任委』への自治会費横流し糾弾」とある。その根拠については次のような事柄が付記されている。
「常任委への自治会費支払いは、3月の教授会で執行部より提案され、ほとんど議論されないまま決定された」「これまで商学部では、やりたい人が正規の手続きを経ないで自治委員になり、総会では、労働者(編註:革マル)も自治委員と一緒に採決に加わっていた」「16名の自治委員の氏名は明らかにされておらず、かろうじて確認できたのは2名」。また、同レジュメには、社会科学部においても5月中旬に自治会費が革マル派常任委に「横流し」される旨の情報の記載がある。


【リンク】

5.7学部団交レジュメ