1973年3月25日(月) 卒業式。早大中心主義礼賛の式辞に対し批判的な答辞。

提供: 19721108
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【概要】

長期ストで卒業判定が遅れた第一、第二政経学部と教育学部を除く6700余名が卒業式を迎えた。村井総長は式辞の中で、11.8以降の学内の混乱を学問研究と早大中心に置く限り乗り越えられると述べた。これに対して答辞は、責められなければならないのは無気力で無責任な大学当局だとする批判的な内容だった。

【この日のできごと】

●政経学部と教育学部とを除いて卒業式。
◎二文自治会執行委員会が「川口君虐殺糾弾」の横断幕を持ってカンパ活動。
■革マルは「早稲田大学新聞」特集号『47年度卒業生就職先一覧表』を売る。


【学部8288人、研究科・専攻科741人が卒業】

全卒業生は9029人。そのうち長期ストの影響で卒業判定が遅れた第一、第二政経学部※と教育学部の計2502人を除く6527人が、この日卒業式を迎えた。式辞の中で村井資長学長は、川口君虐殺事件を「遺憾きわまりない事件」とし、その後の学内の動きについては「学問研究と早大を中心に置く限り乗り越えられる」と述べた。「川口大三郎君の死を、この場で再び見直してほしい」としながらも「相手の立場を考え、相手の意見に謙虚に耳を傾けることは、最低限の礼儀だ」と、学生との交渉に対する考えも交えた。
学部総代の答辞では「リンチ殺人など、大学では起こってはならないこと。ゲバ、鉄パイプなども理性の府、大学では許されない」との訴えが、大学院生総代の答辞には「私たちは後ろ髪を引かれる思いでキャンパスを去る。学園は荒廃している。暴力の嵐の前に、私たちにはむなしい脱力感しかなかった。責められなければならないのは無気力で無責任な大学当局だ」との批判が語られた。
なお、混乱に備えて戸塚、牛込両署は警戒態勢をとり、機動隊員60人を配置していた。(1973年3月26日付朝日新聞、1973年3月26日付毎日新聞より)
※廃止が決まった第二政経学部として最後の卒業生。


【11.8以降の学内状況】

3月25日付『早稲田キャンパス』に掲載された73年度の報道方針の中に「川口君リンチ殺害事件をめぐって」という見出しで、当時の学内状況の解説がある。
「11月8日の事件に至るまでの学内状況は、革マル派以外の反代々木系の党派、無党派の活動家は公然とした政治活動等をなしえない状態にあり、革マル派と代々木系との力関係のみが学内状況を左右していたのである。この両派の抗争の進行は、学内自治組織の拠点ブロック化を生み出し、それを固定化させるように現出したのであった。そこでは、両派の学内ブロックから排除された学生の圧倒的部分は、早大での学生生活に創造性や発展性を見出し得ず日常的に無力感や政治的アパシーに陥り、あるいは解決の回路を閉ざされて孤立化していくという、固定的な閉塞状況に覆いつくされていたのである。糾弾集会、学生大会の場に登場した圧倒的な学生大衆のエネルギーは、そういった状況に潜在していた『一般学生』の深い苛立ち怒りが曖昧さを有しつつも一定の志向となって顕在化し、また運動そのものが逆にそれらを包摂し保証しえたことによるものとみることができる。
そしてこの広範なエネルギーはこれまでの固定的な閉塞状況に新たな流動を作り出し、学生大衆の創造性や自主性を『内的代行主義の克服』という形で引出し得たかのようである。少なくとも私達の眼からは、この間の運動は真に大衆運動と呼びうるものの存在の意味性を萌芽的であれ抽出しうるものにみえる。そのことは大衆的文化創造サークルとしてある私達にとって重要な意義を持つものである。
また、より具体的に私達が注視していきたいのは、新たな〈大衆像〉が提示されていると思われる点である。かつての全共闘運動もまた〈大衆〉概念の新たな開示を行った、と言われたことがある。現在、安易に小状況から大状況へと、あるいは政治的課題へと乗り移っていくことを排除し徹頭徹尾クラスに固執していく人々の姿からは、確かに新たな〈大衆像〉を抽出し得るはずである。私達にとってそういった〈大衆像〉と呼ばれるものを視野に入れない限り、自己の活動の空転と衰退がもたらされるのは明らかであるだろう。
もう一つ触れておかねばならないのは、この間の運動が大学当局者の学内管理者としての相貌を暴き出した点である。詳しくは述べないまでも、言述の上での『民主的』態度と、具体的な動向のギャップを身をもって知った者は数多いだろう。このことに関して私達は当局の学生管理の構造といったことを視野に入れつつ、一昨年来繰り返し問うてきた『大学』『教育』『学生存在』とは何か、といったことをより一層深化させていきたいと考える。」(文中の誤字を一部修正)


【クラス討論のメモから】

春休み中は、同盟登校日以外の活動は各クラスで話し合って決められた。クラス討論、クラス通信の発行の他、合宿をするクラスもあった。1Tの合宿で予定されていた討論の課題のメモには次のような項目があった。
・人間の解放とは何なのか
・早大闘争について(一次、二次)
・毛沢東思想について
・戦闘的自治会批判
・「大学解体論」批判
・11.8以前、我々は学園でどのようにくらしてきたか
・11.8では何が問題としてでてきたか
・我々の「自治会像」
・今後、何を学習し、どう闘っていくのか
・4月以降どうするか


【リンク】