1973年5月9日(水)団交を巡る正統性の賛否。一文総長団交実行委を結成。

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【概要】

5.17総長団交の確約は取り付けたものの、そこに至る授業中の総長を本部に連行するなどの手段に関しては、賛否が大きく分かれた。また、団交そのものに対する準備が新執行部側に不十分であるという指摘もあった。しかしながら、革マル派の巻き返しによって停滞を余儀なくされている状況を打開する手立てとして、団交を肯定的にとらえる意見が大勢を占めた。一文では、執行部内の意見の相違を踏まえ、執行委の有志と団実委のメンバーによって「5.17全学総長団交一文実行委員会」の結成が提案され、これを受けて、執行部も全学総長団交に参加することを決定した。


【この日のできごと】

◎一文、自治委員協議会。5/8の総括と5/17に向けての運動方針案を協議。結果、一文執行部も5.17全学総長団交に参加と決定。


【団交に向け一文実行委員会の結成】

一文自治会執行委員会の有志と団交実行委員会とが連名で「5.17全学総長団交一文実行委員会」の結成を呼びかけた。
「5.17総長団交こそは、我々の闘いに決定的な飛躍をもたらすであろう」として、一文での態勢固めのためを目的として実行委員会を結成するとしている。それはまた「停滞を打破し一層の大衆化への契機となる」ことであり「闘いを閉鎖化する傾向=闘いの代行化を取り除く」ことであるとしている。
実行委員会の実効性については、自治会執行委員会とクラスから選出された自治委員会による組織は代行化の弊害を生むことから、「最大限広汎な学友によって担われる実行委という大衆的共闘機関の創出こそが最も強力」だとしている。さらにこうした大衆機関は、困難な状況下にある文学部においてとりわけ必要であるとし、「革マルの暴力的抑制下にあって、クラス活動はもとよりキャンパスに入ることもおぼつかないという文学部で、クラス・個人に分断されんとしている闘いを結合し発展させていくためには、もはや形式的な団結の象徴である執行委員会だけでは決定的に不充分である」とその理由を述べている。


【5.8『総長』団交への批判】

実行委員会のビラは、5.8『総長』団交をようやく克ち取ったえがたい成果であるとし、批判の声に対し「否」を表明している。そこに散見する批判の声を拾うと…「団交は時期尚早である」「5.8団交のやり方が問題である」「5.8団交には大衆運動の原則から逸脱するような問題点がある」「一部の集団とのボス交である」「一部の集団のルール無視・分断行為」「要求項目が確認されていない」「団交への準備ができていない」。
5.8『総長』団交については、5月9日付朝日新聞に「関係者の見方」として次のような解説が載った。
「各学部の反革マルの自治会は『反民青、反革マル』を叫び、黒ヘルメットをかぶって革マル派との武力対決も止むなしとする行動委員会に対し『要求、原則で一致でき、セクトの引回しをしない限り、行動も統一できる』としてきたが、8日の団交は、行動委に対する評価でかなりのとまどいも表面化した。
行動委を支持する第一文学部の新執行部のある役員は『とにかく川口君虐殺以来、ずっと逃げ回っていた村井を、学生の前へ引出したことは評価できる。方法が社会常識的でないからといって、統一行動ができないのはおかしい』といった。しかし、『われわれは体制がつくる既成事実を粉砕しなければならないと同時に、われわれの運動内部での“既成事実”に対しても、警戒すべきだと思う。要求が一致しているからといって、村井を連れてきたから一緒に行動しようでは、簡単にのるわけにいかない。あくまで大衆的な意思一致があるべきだった』とする政経学部のある学生の意見が、学生たちの一般的な考えのようだった。」


【哲学4年のクラ討報告】

5.8『総長』団交をどのように考えるか、一文哲学4年は「クラ討報告」のビラを出した。このクラス討論は、在籍者17名中9名の参加による。
5.8団交に関するクラスとしての一致点は「執行部の下に位置づけられている特別委員会である一文団実委が自治会執行部の確認なしに勝手な行動をしたことは当然批判されなければいけない」というもので「各学部執行部は一貫して総長団交を要求したのに、それには何ら応えることなく、全学団実委なる実体のない私的機関に確約するとは、明らかに自治会無視、学生団結に対する分断策動である」「しかし、実際、総長が出てくることを約束させたことは成果である。それを積極的に利用すべきである。この機会をとりにがすと次にそういう機会を望むことはむずかしい」等の意見が付記されている。
5.17団交については「基本的に政経執行部が出した5原則の方向で、しかも各クラス・専修から団行委を選出し、執行部が責任をもって団交代表団を組織すべきである」という一致点が確認されたが、一・二文、教育、政経、法、社学の各自治会連合の主催する団交に総長を出席させるのが望ましいが、実際には実現は困難だとした。そのうえで5.17団交への出席の是非については、「総長が確約した相手は全学団実委(準)という実体のないものである以上、自治会が無条件で参加することは無原則的である。独自に全学と協議して団交を追求すべきだ。自分も5.17に参加しない」が5名という結果であった。


【団交へ向けての議論】

「個人ビラ 文責=Y」の署名のある「連日開かれている会議の不毛な論議に対して一言口をはさみたいと思う。」という書き出しのビラが残っている。そこには「執行委か団実委かというような対立、執行委が団実委の上にあるとかないとか、また、前者が後者に入るとか入らないとか」といった不毛な論議が3日間にわたって続いていたことが記されている。
どのような内容だったのか、なにゆえにそれほど論議を必要としたのか。『一文有志の記録』にその一部が記録されている。


委員長;8日の行動は大衆的ではない。現在的には総長団交は無理。時期尚早。全学的取り組みの困難さ。文学部の遅れ。自治委員総会で課題を明確化し、やるかやらないかを決定する。
N:正式に参加しないのか。
委員長:全学団実委に参加するかどうかを論議していく。
W:いかにクラスを再編していくか、全学友が結集できる軸としての総長団交に。
?: 全学の協力は当然であるが、学生自治会として取り組むべきである。全学団交実行委員会の性格は不明確であり、そこへ参加する根拠も不明確だ。
日史:(村井総長を理工学部から)連れてきたことは問題。クラ討、自治委員総会、学生大会、総長団交へと闘争態勢を固めることが急務。総長団交を軸にして、クラスの再編、強化を。
K:17日はどうするのか。
委員長:延期。僕達のやり方を追求していく。
日史:総長のつかまえ方に我々の限界があった。
2J:我々の機動的なクラス活動の手足になるのがAC(行動委)である。執行委は、なぜ「管理支配体制」なのか、問題提起すべきである。
委員長:一点突破、全面展開式では、課題は不明確、不鮮明だ。
2J:決戦団交ではない、一つの契機としての総長団交であるべきだ。
?:獲得目標が不明確だ。
2J:まだ大衆的な議論が巻き起こっていない。
教育:1週間ぐらいで大衆的に運動が組織し得るかは否定的だ。
2T:執行部が参加しない限り団交は形成されない。2000名以上の大衆の意志をどうするか。状況に押され続けている。状況を設定しなければ。
委員長:怒りだけでは動けない。具体的に何を課題としうるか。11.13-14と同じ地平では運動は進められない。
2J:5.17団交が、何故に、どうしていけないのか。
委員長:やり方に問題。不充分性残るが、それは克服しつつ、一点に集中していくのではおかしい。「やれる」「しようがない」では運動は進められない。
2J:場が設定されて、執行部の立場もルールもわかるけれど、統一スローガンを基盤として闘えるのではないか。
?:決裂の場合、何が起こるかわからない。
1S:獲得課題は?
日史:単に承認運動ではない。早稲田解放である。
?:2000人の追求の末に署名。総長団交の中身は?
委員長:ピンチにならなければ頭は回らない。執行部の提起によって下からの討論が可能になる。一文の独自性を積極的に運動にする。
Y-a:総長団交要求という点では一致している。8日のような状態で糾弾は当然。
2H:状況は煮つまっていない。何を変えていくのか、決裂した場合、研究棟封鎖を出来る意思一致もない。何年かかるかわからないけれどもやっていかなくてはいけない。17日は最終決戦ではない。
Y-b:現在の段階で何をなすべきか、どういう方向性を持った運動をつくっていくべきか。…総長団交をしなくてはならない。
?:何を突き詰めていくのか。一文学部団交はできない。試験に対応しきれない。実行委員会のあり方、規約→自治会運動の方向性、早稲田をどう変えていくのかを捉えた場合の柱。(原文は「幹」)やり方の点検、創出。
委員長:5.17に日時が決まっており、加わっていくなかで創出していくしかない。克服していく課題は多すぎる。全学的な連絡体制(構築?)に全力を尽くす。課題を追求するだけではダメ。今回(8日)のやり方はまずい。パターン化してはいけない。
※「教育」とあるのは専修かと思われる。


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