1973年3月9日(金)各学部合格発表日。

提供: 19721108
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【概要】

一文では、合格発表に集まる受験生へ11.8以降の状況および運動の展望を記した各クラスからのビラが手渡された。教育学部では4年生の卒業試験日程を告示。教場試験をめぐって常任委員会と学部当局が折衝を続ける。

【この日のできごと】


【クラスからの発信】

一文では新執行部の方針で、春休み期間はクラスごとにクラス討論、自主ゼミ等で議論を深め、4月からの新学期に備えることが決まっていた。それには、クラス通信、新入生に向けたパンフレット等の媒体作りも含まれていた。
現在確認できるのは、1Jの『報(バオ)』、1Tの『かわらばん』。
中国語で新聞を意味する『報(バオ)』は2月19日創刊、3月12日には第4号、3月26日には増刊号が出ている。発刊に向けての挨拶は次のように始まっている。
「てやんでぇ、べらぼうめ!何がストだよ。何が学生大会だよ。試験が無期延期となりゃ、学校に来る奴なんざこれっぽっちよ。みんなの自治会、手作り自治会、笑わせちゃいけないよ。学校にシコシコ来る奴もいい加減バカだと思うけどよ、全然来ない奴もどうかと思うよ。そのうち、どこの馬の骨だか豚の骨だかわからないのが、ミスター自治会って顔下げてノコノコ教室に入ってきてよ、やれ自治会費払えだとか、やれ討論しろとか五月蠅くわめきちらすぜ。イヤだね~。おもっただけで寒けがしてくる。(以下省略)」
執筆したのは都立青山高校出身のF君。同じ1Jから出た執行委員長H君と副委員長のY君をクラス全員でバックアップしたいと「『報(バオ)』の発行を提案。「創刊の辞」からはその思いが熱く伝わってくる。
囲みの〈いろはがるたの「小報」〉に残されているのは…。
「い」いつまでも 居直るカクマル もうごめん
「ろ」路地裏で 人影あれば ゲバのマル
「は」恥を知れ 人を殺して 記者会見
花より団交
「に」にらみつけ 顔を覚えて さてリンチ
「ほ」本当は 心のやさしい(?) カクマルさん
「へ」変態と言われてニッコリ カクマル君
「と」取らぬたぬきの マル算用
「ち」市井(ちまた)では カクマル出てけ と人は言う
「り」理性なし バカでハレンチ カクマル派


また、1T『かわらばん』の編集後記には「創刊号で終わるだろうという悲観的観測(大方の予想)を裏切って第2号刊行。第2号表紙は、創刊号の表紙があまったるいという批判を否定的教訓としてクールに、そしてインクも黒く、若干アナーキスチィックにきめてみました。第3号もクールに迫りたいと思います。(第3号3月24日発刊予定。『合宿を前にして』。個人的総括提起などしてほしい。原稿締め切り3月21日必着。)」とあり、カンパの呼び掛けも併せてしている。


【『一文有志の記録』から】

「自治会再建運動ということばがある。今我々が早稲田で闘っているのは自治会再建運動か?否である。決して自治会再建運動といった次元でのみとらえうるものではない。自治会再建運動とは、川口君を虐殺したような異常な自治会を否定して再び正常な自治会を建設しようということだと思う。そのような運動は、自治会の機構を確立した時点で終止符を打ってしまうだろう。目指すものはそのような終止符のある運動ではないのである。機構、規約の確立ということは、一段階の区切りとはなり得ても、それ以上の意味は持たない。それ故、再建運動ということばの名称づけはこの運動にあてはまらないのである。(中略)この運動は再建といったレベルでとらえるのではなく、新しい学生運動の形態を創り出す上での過渡期的形態であると思う。新しい運動体の創出に向けた闘いであるこの運動は、如何に自治会を再び建設するかではなくて如何にしたら新しい自治会(運動体)を創り出し得るかといったところに視点を置くべきである。悪しき“秩序主義者”になってはならない。秩序が保たれればすべては正常だというのは論理の逆倒しである。それは学内秩序が保たれていれば問題はないとして、混乱を避けるためと称してロックアウトをしばしば行った当局の論理と全く同一である。」

【新入生歓迎のビラ】

合格発表のこの日配られたビラは「お前も騒ぎに巻き込んでやる!」(ワセダ大学を“紛争校”にする会)、「ここは『注文の多い料理店』か!?」(一文団交実行委)、「虐殺への怒りうちかため共に四月へ!」(一文一年生連絡会議・仮称)など、見出しだけでなく論調も多彩である。そこには学内の膠着した状況も伺える。「ワセダを“紛争校”にする会」のビラは「お前も騒ぎに巻き込んでやる!」「大学は人生の墓場だ!」という二本見出し以下に次のような文面が連なる。
「入試に受かってウキウキしている諸君、わざわざロクでもない所へ来る必要なんかないから、入学てつづきをやめてさっさと帰ろう。そして自分の所で闘いを起こそう。それでも大学に来たいという人は以下を読んで欲しい。①大学で学問なんかできない。大学へ来たら、中学・高校と違って専門的な学問・研究ができるとホントに思っている人は今どき少ないだろうけど、念の為に言っておく。大学の授業なんてロクでもないものだ。②「やっと受験勉強から解放された。やりたい事ができる」と思っている人へ……別に授業へは期待していないんですヨ。自分の勉強ができるからネ……やっと落ちついて読みたい本を好きなだけ読める。……社会に出る前にもう一度じっくりと自己を見つめる猶予の時間がほしいetc.ぼくたちも入学当時こんな事を感じていたが、気がついたら三年間無為にすごしていた。③お前も騒ぎに巻き込んでやる。タテカンがあちこちに立ち並び、さまざまなビラを渡されると、サスガ大学だなあ…、皆さん色々やっていますネェ…頑張って下さい。冗談じゃない。そんな風に他人事に思われてたまるか。君たちがその気でなくとも、ぼくらの方で君たちを巻き込んでやる。覚悟してください。」
註:「ワセダを“紛争校”にする会」にある“紛争校”とは…。1972年12月末に日本私学振興財団は、川口大三郎君虐殺糾弾闘争による混乱を理由に早稲田大学への補助金交付を留保した。「紛争指定校」とされると補助金(6億6700万円)は交付されず、私学の経営にとっては大打撃となる。結果として補助金は交付されたのだが、財団の時子山恒三郎理事長が第9代早大総長であり、71年の総長選で村井資長に破れたという経緯もあった。


【リンク】

「報bao」創刊号1年J組
クラス討論レジュメ 文責O
お前も騒ぎに巻き込んでやる! ワセダ大学を”紛争校”にする会
桜の花は咲いたけれども・・・一文自治会執行委員会新郵政歓迎実行委員会
ここは『注文の多い料理店』か!? 一文団交実行委
虐殺への怒りうちかため共に四月へ! 一文一年生連合会議(仮称、準)
「不運にもすべった人へ、そして、うかった人へ」 一文2T(旧1T)有志